2015年05月04日

小説の続き書きました。遠いデザイン16-4

遠いデザイン16-4

2001年 春

 電話をかけるのは、夜にしよう。何時頃がいいのかな? 十時では遅すぎる? 亮子は一人暮らし? それとも親と同居か?
 萌子から頼まれた「電マル」のキャッチ案をPCから送信しながら、七瀬は亮子に電話をかける作戦を練っていた。
ブロードバンドならではの軽やかさで、送信中のバーは一瞬のうちに画面上の空白を埋めていく。七瀬は萌子から預かったキャラクターの出力紙をまとめてゴミ箱に放り投げた。
 夜の9時近辺にかけるとして、場所はどこにしよう。自宅というわけにはいかないから、やっぱり事務所か……。
 紅潮した顔を目の当たりにし、亮子の愛を確信してから三週間。煩悶を力に練り上げたstoryはまだその輝きを失っていなかった。だが、それを外に向けて発表しなければ、正当な評価が返ってくることはない。何よりも、時間の経過とともに作品自体の新鮮みが薄れ、発表の意欲が萎えてしまうことを七瀬は恐れた。
「もう引き延ばせない。とにかく一日も早く決行するんだ。よし、明日だ。決めた! ぜったいに明日だ!」
 そう声に出して自らを鼓舞した。
 しかし、一夜明けて決行の時間が近づいてきても、七瀬は相変わらずためらっていた。事務所からかけると決めていたが、仕事場ということもあり、気持ちが上手く切り替えられそうになかった。
 そこで仕事を早めに切り上げて、帰宅の道すがら電話をかける場所をさがすことにした。いつもの帰宅ルートではなく、工場跡地に造成された新興住宅地の方へ回ってみようと思った。開通したバイパス沿線には、念願の建売マイホームを手に入れたファミリーの幸福感をさらに満たそうと、大型のショッピングセンターがオープンしていたことも知っていた。



遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。

14年前の2001年が舞台。
中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。
この歳になると。そんなことしか書けませんので…。
地域の産業支援を本格的にやりだしてから、
コピーを前みたいに書けなくなったので、
その手慰みのつもりで書いています。


Posted by Fuji-Con at 15:07

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