2014年09月13日

小説の続き書きました。遠いデザイン12-4

遠いデザイン12-4

2001年 春

 土曜日は事務所にいても、ほとんど電話などかかってこない。希に鳴る受話器を取れば、聞こえてくるのは同様に休日出勤を余儀なくされたメディア通信社の連中の声ときまっていて、必ず「おっ、おった! おった!」を連呼する。仕事の発注ではない。相談があるからといって呼び出して、昼飯をおごらせようとするのだ。
 三谷課長か? それとも室長だろうか? 舌打ちしている間に呼び出し音は留守録に切り替わり、ピーッという音とともに静まった。
 七瀬は扉を開け、衣類をかき分けてケイタイをつかんだ。小窓に、伝言メモあり、と出ていたが、090からはじまる着信番号に心当たりはなかった。
 すぐにメッセージを聞こうかどうか迷っていると、入口のカーテンが勢いよく引かれて体格のいい若い男が入ってきた。男は派手な音とともにロッカーの扉を開放し、短パンのポケットからキーホルダーやらサイフやらを取り出して、無造作に中に投げ込みはじめる。引きちぎれそうなくらい引き伸ばされたTシャツの下から、蝶のタトゥーが舞う骨太の肩口が現れる。
 狭苦しいロッカー室がさらに居心地の悪いものとなって、七瀬は急いで奥から衣類を引っぱり出す。からだにはまだ拭ききれていない水気が残っていて、ジーパンの布地が肌にひっついてスムーズに腰まで上がってこない。それでも男より先にロッカー室を出て、玄関横の休憩所でひと息ついた。
 同じ館内にある入浴施設の利用者なのだろう。休憩室にはプラスチックの洗面器を膝に置いた年配の男女が濡れ髪の頭を揃ってテレビ画面に向けている。今日は土曜日ということもあって、若い女の姿もちらほら見えた。
 七瀬はテレビから流れる大リーグ中継のアナウンサーの声に送られて玄関を出た。歩きながらケイタイを耳に当てて再生ボタンを押してみる。
「お世話になります。JAの川奈です」
 耳に飛び込んできた柔らかな声に絶句した。想像もしていなかったが、留守録に入っていたのは亮子からのメッセージだった。


遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。

13年前の2001年が舞台。
中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。
この歳になると。そんなことしか書けませんので…。
地域の産業支援を本格的にやりだしてから、
コピーを前みたいに書けなくなったので、
その手慰みのつもりで書いています。


Posted by Fuji-Con at 16:15

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